手の痛みと鍼灸
手の痛みに悩む人が増えています。
ひどい痛みではないとそのままにしていることが多いようですが、
日常生活において手指はよく使うためとても気になります。
日常生活に支障があるようでしたら早めに整形外科での受診をおすすめします。
どのような痛みがどの部位に現れるのか例を上げていきます。
腱鞘炎
腱鞘炎とは、筋肉の末端である「腱」と、腱を固定する「腱鞘(けんしょう)」に炎症が起こる疾患です。
本来は、腱鞘と腱の間に滑液があるため、腱が動いてもこすれることはありません。
しかし、指や手を激しく動かすなどして負荷がかかると、腱と腱鞘(けんしょう)がこすれて、炎症を起こしてしまうのです。
さらに炎症を繰り返すと、しだいに腱は太く、腱鞘の穴は狭くなっていくため、引っかかり感や動かしづらさが生じます。
指や手首といった、生活の中でよく動かす部位に発症しやすく、痛み・腫れ・熱感・引っかかり感・動かしづらさを生じます。
■ばね指(弾発指)
指に生じる腱鞘炎を「ばね指」といいます。特に親指と中指で発症します。
指の付け根で腱と腱鞘の炎症が起こると、腱鞘が腫れて厚くなり、腱が締め付けられます。
締め付けられた部分の腱はやや細くなる一方、その前後の部分が相対的に腫れ、腱が腱鞘に引っかかるようになり、指の曲げ伸ばしがしにくくなります。
このような状態で指を動かそうと力を入れると、指がばねのように跳ね上がる「ばね現象」が起こります。
ばね指の多くは、手のひら側に痛みが生じます。グーの形にして(こぶしを握って)手を開いたときに、かっくんと遅れて伸びるような状態になります。病状が進行すれば、指の付け根に痛みを伴います。
どの指にもなりますが、親指が最も多く、中指や薬指がそれに続きます。重症になると、自力では伸ばすことができなくなります。
■ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)
手首の親指側で生じる腱鞘炎を「ドケルバン病」といいます。
親指と手首をつなぐ2本の腱(短母指伸筋腱・たんぼししんきんけん、/長母指外転筋腱・ちょうぼしがいてんきんけん)と、それらを固定する腱鞘で炎症が起こり、腱の動きがスムーズでなくなり、手首の母指側が痛み、腫れます。
親指を他の指で握った状態で、小指側に手首を曲げると、痛みが出ることで診断します。(フィンケルシュタインテスト変法)この場合は、親指を伸ばしたり開いたりする動作が障害されます。
(フィンケルシュタインテスト変法)
痛みが悪化すると、ものをつかんだり、タオルを絞ったり、重いものを持ったりといった日常的な動作がつらくなります。
腱鞘炎の原因と対処法
■原因
腱鞘炎は、長時間パソコンで入力作業をする人や、スマートフォンを片手で長時間操作する人、楽器を演奏する人、スポーツをする人など、手を酷使することで発症しやすいとされていますが、手を酷使していなくても腱鞘炎を発症することがあります。
妊娠中や産後、閉経期の女性は腱鞘炎になりやすく、女性ホルモンとの関連が考えられています。特に産後は、女性ホルモンの分泌の変化に加え、首のすわっていない赤ちゃんの頭を支えたり抱き上げたりすることで手首に大きな負担がかかるため、ドケルバン病を発症しやすいといわれています。
また、糖尿病の人も腱鞘炎を発症しやすい傾向にあります。
■対処法
手を酷使するような作業は避け無理をしないようにしましょう。ただ、指をまったく動かさないのは逆効果で、関節が固くなってしまい、指を動かしにくくなることがあります。
局所の安静(シーネ固定も含む)、投薬、腱鞘内ステロイド注射などの保存的療法を行います。
改善しないときや再発を繰り返す場合は、腱鞘の鞘を開く手術(腱鞘切開)を行います。
手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)
神経の圧迫によりしびれが生じるのが手根管症候群です。
手根管は、手首の内側(手のひら側)にあり、腱と神経(正中神経)が通るトンネルのような組織です。
手根管に炎症が起こると神経が圧迫されるため、痛みやしびれなどの症状が出ます。
正中神経は、親指、人差し指、中指、薬指(一部分)の指先まで伸びているため、これらの指に症状が出る一方、小指には症状が出ません。夜間や明け方に痛みやしびれが強くなる人もいますが、手首を振るようにすると改善するのも特徴の一つです。
症状が進行すると、親指の付け根部分の筋肉が萎縮することがあり、ものをつまむ、服のボタンをかけるなどの動作が難しくなります。
手根管症候群の原因と対処法
■原因
手根管症候群の原因は、腱鞘炎のように手の酷使が原因となっているわけではなくはっきりとしていません。
腱鞘炎と同様、妊娠中や産後、閉経期の女性が発症しやすいことから、女性ホルモンが関係しているといわれています。
糖尿病の人が発症しやすいとされているのも腱鞘炎と同じです。
■対処法
腱鞘炎と同じように、手を酷使しないようにし、手を使う作業は休憩を取りましょう。
医療機関では、症状が軽い場合は消炎鎮痛剤(飲み薬)や、神経障害に使われるビタミンB12の飲み薬を処方します。
夜間や明け方の症状に対処するため、寝ている間に手首を装具で固定する方法もあります。
それでも症状が改善しない場合は、ステロイド注射で炎症を抑えたり、手術で手根管の上にある靱帯を切開して神経の圧迫を解消したりすることもあります。
母指CM関節症(親指の付け根の関節の変形性関節症)原因と対処法
物をつまむ時やビンのふたを開ける時など母指(親指)に力を必要とする動作で、手首の母指の付け根付近に痛みが出ます。
進行するとこの付近が膨らんできて母指が開きにくくなります。
また母指の指先の関節が曲がり、手前の関節が反った「白鳥の首」変形を呈してきます。
母指の付け根のCM関節のところに腫れがあり、押すと痛みがあります。母指を捻るようにすると強い痛みが出ます。
■原因
使い過ぎや老化に伴って、関節軟骨の摩耗が起き易く、進行すると関節が腫れ、亜脱臼してきて母指が変形してきます
■対処法
消炎鎮痛剤入りの貼り薬を貼り、CM関節保護用の軟性装具を付けるか、固めの包帯を母指から手首にかけて8の字型に巻いて動きを制限します。
それでも不十分なときは、痛み止め(消炎鎮痛剤)の内服、関節内注射を行います。
痛みが強く、亜脱臼を伴う高度な関節の変形や母指の白鳥の首変形が見られる時には、関節固定術や大菱形骨の一部を切除して靱帯を再建する切除関節形成術などの手術が必要になります。
手以外の部位にも痛みが出る関節リウマチ
関節リウマチは指の複数の関節に症状が出ることがあるほか、手首や膝、足首など、指だけでなく全身の関節に腫れや変形などの症状の出る自己免疫疾患です。
関節だけの病気ではなく全身病ですので、貧血症状がでたり、体がだるくなったり、微熱がでることもあり、こうなると症状が悪化します。
関節リウマチによる症状には個人差があり、症状が出る関節の部位や数も人それぞれです。
起床時から30分以上、手の関節が動かしにくくなっている(朝のこわばり)、服のボタン外しやハサミ、箸など細かい動きがしにくいと感じたときは、なるべく早く受診しましょう。
早期診断・治療は病状の進行を抑えることにつながり、その後の生活の質を保つためにも重要です。
また、中年~高齢に比較すると頻度は低いものの、若い人でも治療が必要な関節痛(膠原病などによる)になることがあります。
腱鞘炎を鍼灸で改善
腱鞘炎の鍼灸治療は、痛みを鎮める効果や血行を良くする効果があります。
患部の痛みを鎮めて血行を良くすることで、動きの悪くなった筋肉をほぐし、自然治癒力を高めることができます。
鍼灸による腱鞘炎の治療では、炎症の起きている箇所やその周辺に、鍼や灸で刺激します。
また、手の延長線上にある腕、肩、首、腰などのこりによって、手首などに負担がかかっていることが多いため、これらの部位にも施術をするのでより効果が期待できます。
効果の現れ方には個人差がありますが、週1~2回の治療を1~2ヶ月ほど続けると改善が見られるケースが多いようです。